カラン、コロン、カランと小気味よく回る糸操機。
ある日の朝、京都 西陣の織元の工房を訪れました。
一歩、工房内に足を踏み入れると、そこはどこか懐かしい空間が広がっています。
懐かしさを感じるのは、歴史を感じる建物の構造のせいか、時折、屋内を通り抜ける風が心地よく感じられる日でした。
京都の町屋に見られるうなぎの寝床と呼ばれる、奥へ奥へと続く空間。
奥行は深いが、暗く感じない考えられた採光や風通しのよい造り。
祖父母の家のような雰囲気をどこか感じるような、タイムスリップした心地になる空間です。
耳慣れないけれど心地よいリズムが至るところから聞こえます。
あたたかな日差しが差し込む工房では、陽光を受けた織機がガシャン、ガシャンと一定のリズムを奏でながら何台も稼働していました。
織機はそれぞれが極色彩の布地を織り上げているが、同じ柄は存在しないのです。
日の光に繊細な絹糸がゆらゆらと煌めいて、風にふわりと揺らめいて、その様子を眺めるだけでも、心が整っていくような気になります。
熟練の技術を持つ織手さんたちが手慣れた仕草で糸をつなぎ変えたり、細かな調整をされたりと動き回る姿がお見受けできます。
織機が何台も稼働していて、忙しそうに見えるが、技術を持つ織手さんの数も減り、一時のことを思うと西陣織の技術継承が難しくなっているそう。
それもそのはず、織手の方が一人前になるまでに必要な期間は数年から10年はくだらないとのこと。こんなにも細い糸を間違うことなく繋いだり、色を変える作業をされていたり、途中で切れてしまったらそこも修復する。根気と技術と集中力が必要な作業ばかりです。
そんな風に丁寧にひと織りひと織り見守られ、ゆっくりゆっくり織り上がってくる布地を見ているとため息のでるような繊細さです。
絹糸は一本一本が髪の毛よりも細く、その細い糸を高密度に織りあげていくので、細かな柄も表現ができると織元さんが話してくださいました。
Photofabも、この高密度で繊細な絹糸を織り上げる技術に支えられ、写真を絹織物に織り上げることができるようになったことで実現できたサービスです。
様々な種類の生き物の毛並みを表現する艶や影。
それを細かく映しこんでいく、そんな気の遠くなるような作業が工房の中で行われていました。織上がった布地は角度を変えるときらめきがかわり、そこにいる愛らしい生き物が、今、動いたのでは?と思うほど鮮明でした。
あなたが愛情をこめて撮影した一枚のお気に入りの写真。
それが、たくさんの人の匠の技術とあたたかな眼差しを受けながら、伝統の西陣織に生まれ変わる現場がそこに静かに広がっていました。